器
彼の誕生日。
ケーキを買ってお祝いしようという私に
「まあ。えら~い」
とだけ言って、少し迷惑そうな彼。
祝ってもらったところで対してうれしくないのだろう。
うれしい年でもないか。
とりあえずケーキとごはんの材料を買って帰る。
大量のとん汁と2.3日分のハンバーグを冷凍庫に。
「しばらくこれで生きていけるだろ」セット。
電気屋さんで待ち合わせをして誕生日プレゼントのドライヤーを物色。
夜ご飯の回転ずし屋にむかう道すがら
「ケーキ買ったの?」「うん」
なんて話す。
ケーキが入る余地を残しながらお寿司を食べた。
家についてすぐに
「ケーキ食べていい?」ってニヤニヤして聞いてくる。
ケーキを食べられるのがうれしいらしい。
「もちろん」と言って二人で直接フォークでかぶりつく。
「美味しすぎる!!どうなってるの?!」
といいながら食べる。
そうだった。彼はそういう人だった。
ケーキもご飯も誕生日を祝ってもらえることも、対してそんなにうれしくないのは本心だろう。
でも、やってくれたこと対しては100%受け止めて全身で喜んでくれる。
「期待しないし、無理してやってくれなくていいし、求めてないよ。
でも本当にありがとう。」
そういう人だ。